第139回例会は、今川恭子氏をお招きし、赤ちゃんと音楽の関係を軸に、ヒトと音楽の関わりを様々な角度から捉えた研究内容を講義していただきました。
写真をクリックすると、ほかの写真もご覧になれます。
乳児期に母親と同期する経験が利他的な行動の起源になっていることから始まり、子どもたち が自ら音を発見することの大切さ、そしてそれをコントロールしていくプロセス等、難しい研究も わかりやすくお話してくださり、それをどう現場に結びつけていくことができるかというところ まで示唆していただきました。
後半は、鈴木楽器に展示されている様々な楽器から、参加者も音探し。
身体を使って音を知ることにより、楽器の音の出し方が変わるということを参加者も体感。
教育の視点を持った研 究者である今川氏の講義と実践で、充実した3時間の例会となりました。
例会概要・講師プロフィール
■
例会概要
『赤ちゃんは音楽が好き』と言われる。本当にそうなのだろうか。赤ちゃんと音楽との関係をめぐっては、近年乳児科学を中心に多くの知見が提示されている。中でも、人が生まれながらに他者と通じ合う力をもち、その力の基盤が音楽的であるとするマロックとトレヴァーセンらの提言は、発達心理学、神経生理学、生物学など学際的エビデンスと音楽教育・療法現場の知見とを統合しながら、新たな思考枠組を提供してくれるように思われる。
この枠組の中で赤ちゃんの音楽性の起源と発達はどのように捉えらるのか。またこの枠組から、乳幼児期の音楽教育実践に与えられる示唆とは何だろうか。
前半で理論について紹介し、後半は実践的に動きながら考えてみたい。
[参考文献]Malloch and Trevarthen (2009) Communicative Musicality:Exploring the basis of human companionship. Oxford university Press 2009
(邦訳:マロックとトレヴァーセン編著,根ケ山光一・今川恭子他監訳『絆の音楽性―つながりの基盤を求めて』音楽之友社2018)
■
講師プロフィール
今川 恭子 氏(聖心女子大学 文学部教育学科 教授)
東京芸術大学音楽学部楽理科卒業,同大学院音楽研究科博士後期課程単位取得満期退学。
乳幼児期を起点とした音楽的発達と音楽学習に関する研究を中心に,広く保育,学校教育現場から家庭までさまざまなフィールドを対象に研究している。
主な著書は『乳幼児の音楽表現―赤ちゃんから始まる音環境の創造』(中央法規),『音楽を学ぶということ―これから音楽を教える・学ぶ人のために』(教育芸術社),『子どもの表現を見る・育てる-音楽と造形の視点から』(文化書房博文社),『音楽する子どもをつかまえたい-実験研究者とフィールドワーカーの対話』(ふくろう出版)など。